ティーンにニュースを届ける。Snapchatが「Discover」開始
USでティーンの支持を集めるメッセージアプリ「Snapchat」が、CNNなどの大手メディアの配信を始めた。
SnapchatにCNNとかが配信を始めたそうな。 Snapchat’s new Discover feature could be a significant mom… - Nieman Journalism Lab http://t.co/yVtqF1Qbtf
— やまぐち りょう (@d_tettu) 2015, 1月 28
「Discover」と呼ばれる同機能は、CNNの他にもviceやYahoo!Newsなど。Snapchatのマークのものが一つ含まれているが…これは自前のものなのかもしれない。特定メディアを示すものは見当たらなかった。
1ビュー、1コンテンツのシンプルさ
正直に言ってこれまで使ったことがないので、そもそも操作などに慣れない点があったが、アプリを起動して右にスワイプすると出てくるストーリー画面から、頑張ってたどってみる。
こちらの画面の右上、「○」をタップし、Discoverに遷移。
名だたるメディアがズラリ。試しにCNNを選択してみる。
大きなアイコンが表示されて…。
ファーストビューでいきなりコンテンツがどかっと表示された。ここから右にスワイプすると次のコンテンツ、下にスワイプするとコンテンツ詳細に遷移される。
これはテキストと写真のものだが、他にも自動で動画が再生されるものもあった。かなりのモバイルネイティブ。
「完全にモバイルネイティブだ」
Nieman Journalism Labの記事内で、Joshuaさんはこの機能追加について「これは完全にモバイルネイティブだ」と述べている。
新聞やテレビのコンテンツをぎこちなく新しい入れ物に入れました、なんてとこは皆無だ。垂直型のスマホに最適化され、ひと目で分かるよう構築されており、音や動画など視聴覚に訴える要素を組み合わせ、スワイプでコンテンツ間を遷移することができる…友だちからのメッセージと同居するかたちでね
その一方で現状での問題点(リリースされたばかりだが)も挙げられている。ナビゲーションの問題や、パーソナライゼーションに関する指摘だ。広告モデルも実証されていない。
しかし、「新聞やテレビの広告費、訴求力が低下する中で、モバイルにニュースを届ける、その第一歩としては注視するべきではないだろうか。私はそう約束する」とも続ける。
これがどのようなかたちに続くのか。使うことは殆どないが、ウォッチしていきたい。
あの人の趣向が分かる…「いいね、お気に入り」した投稿が分かるアプリ「Starlike」がいい感じ
AOLが1月14日にリリースした「Starlike」、使ってみてなかなか良さげ。
FacebookやLinkedinの友達、Twitterでフォローしている人が「いいね」「お気に入り」した投稿が分かるというもの。投稿それ自体を見るよりも、よりその人の興味関心が反映されていたり、ノイズが少ない印象がある。
ヲチにも最適。
ユーザーが「いいね」したものがひたすらタイムラインとして流れていく仕様。TwitterでのFave、アプリ上でのお気に入りにあたる「Starlike」などを行うことができる。
シェアはTwitterでのRTを意味するものではなく、AppExtentionによるものなので、URLベースでのシェアになる。ここからもRTできたらいいのに。
Starlikeしたものは画面右上にある「☆」をタップすることでチェックすることができる。まあこれはそこまで使わなさそう。
個人的にIFTTTを使用して、TwitterでFavesしたものをログ的にTumblrに投稿するようにしているので、効率的にFavesできるこのアプリはとても有用だった。
Post images to Tumblr when you faves on Twitter by d_tettu - IFTTT
似たような使い方をする人はそこまで多くない気がするけれども、「フォローしている人の興味関心が分かる」「よりノイズの少ない形で、気になる人が有益だと思っている情報が得られる」という点で、素敵なアプリだと思う。IFTTTでレシピを作れば、FavesしたものをEvernoteに保存しておく…などの使い方もできるしね。
Starlike
#JCEJ のイベントで感じた「データクレンジング」のコスト
24日に法政大学構内で開催されたジャーナリズム・イノベーション・アワード。「みんなでつくる、次世代のジャーナリズム」をもとに、様々な作品が出品された。
表彰されたのは首都大学東京 渡邉英徳研究室による「台風リアルタイム・ウォッチャー」と、沖縄タイムス戦後70年取材班による「地図が語る戦没者の足跡」。前者に関してはどこからも紹介されずに、Twitter経由で3日で30万PVに達するなど、ユーザーのニーズを感じたそうな。いわゆるジャーナリストが作ったコンテンツではなかったけれども、それと同じような役割は果たしたように思える。
台風リアルタイム・ウォッチャー
台風リアルタイム・ウォッチャー:台風情報と「減災リポート」のリアルタイム・マッシュアップ
台風リアルタイム速報について。気象庁のデータと、ウェザーニューズのユーザーのデータを組み合わせた。九州豪雨や御岳山の噴火に対応したり。「ユーザーの声を組み合わせれば、減災はできる」。 #jcej
— やまぐち りょう (@d_tettu) 2015, 1月 24
受賞した「台風リアルタイム・ウォッチャー」には予選で最初に1票を投じていたので少しは見る目があったのかも。決勝プレゼンで、リリース後の様々な要望に応えることでプロもつかう品質に磨きあげていったというエピソードも、Webならではぽくてよかった。 #JCEJ
— はまのなまけ (@hama_namake) 2015, 1月 24
グランプリいただきました。ありがとうございました。台風リアルタイム・ウォッチャーは、モバイル版を鋭意開発中です。しばしお待ちください。 #JCEJ
— Hidenori Watanave (@hwtnv) 2015, 1月 24
地図が語る戦没者の足跡
具志頭村「空白の沖縄戦」69年目の夏、戦没者の足跡をたどる | 沖縄タイムス+プラス
沖縄タイムスの作品は、研究室のかたとデジタル部門の方と二人で作ったそうな。一人で地道に掲載許可を取りに行って…涙ぐましい。そういうコストへの敬意は忘れちゃあかんなあ。 #jcej
— やまぐち りょう (@d_tettu) 2015, 1月 24
その他の作品も素敵なものが多かった。
ジャーナリズム・イノベーション・アワード 出展作品ラインナップ
コンテンツの地味な「コスト」
作品について色々とお話を聞きする中で、データクレンジングのコストについて切実なものを感じた。
例えば日経が提供する「人口減少地図 統計でみる市区町村のすがた」については、2人で約2カ月弱ほどの時間をかけて制作されたものだそうな(本来業務と同時並行ではあるだろうけど)。減少の一途をたどる日本の人口問題を可視化した作品だが、このコンテンツを作るにあたって、データを綺麗にする作業にかなりの時間を費やしたという。
「総務省と厚労省とでデータの出し方が異なったりするんですよね…例えば、総務省では各データに地域ごとのコード(北海道は01、沖縄は47、みたいな)をふっているのだけど、他はそうじゃない、とか。それを揃えたりするのがとても苦労した」「各年のデータを揃えようとしても、ある年だけなぜか集計していなくて『あーこれじゃあコンテンツにできないな…どうしよう…』みたいな徒労もあった。出そうとしても、穴があったらねえ」。
それ以外にも、朝日新聞デジタルでは前回の衆院選で「朝日・東大谷口研究室共同調査『政党・候補者のスタンスは」や、「全国『託され度』マップ」を提供したことについて、データの整理などにかなりの労力を費やしたとか。
特に前者に関しては毎日新聞やYahoo!みんなの政治は「ボートマッチ」(各争点について自分の意見に近いものを選択して、それに対する各党との相性を診断するサービス)を提供していたが、「マッチングする、そのスコアリングの中身がブラックボックス化している」のを課題とし、あくまでも生データでの提供にこだわったそうな。
こちらでも裏側ではデータの整理になかなかの時間を費やしたそうで、苦労がうかがえた。なお、一部ネットで話題になった「衆院選を動くグラフに 激増する無効・棄権票」については1週間ほどで制作(実際の制作期間は3日だったかな…)。「ある程度知見を溜めることができたので、コストを低減することができた」。
これらの他にもデータを使った様々な作品についてお話を聞かせていただいたのだけど、どれを聞いてもデータクレンジングに相当の時間を費やしていたようだった。
各省庁が出しているデータのフォーマットを整えてくれよ…とか、ある共通のテーマに関して(選挙における候補者データとか)、一括で整形してオープンにしたりできないのかねえ…など考えさせられた。
僕としても、過去にボートマッチのデータを見させて頂いて、地域ごとの争点に関する賛否について整理してみたりしたことがあったのだけど、なんというか途方も無い作業だった。Excelだと容量が大きくて扱えないから、MSのAccessを使い各テーブルごとに集計してみて、なんか数値がおかしいと思って調べてみたら、WimaxみたいなモバイルWi-Fiを利用しているとIPアドレスが異常値を出して…。「あ、これいつ終わるんだろう」。
ひたすらPCの画面をながめていた2週間だったが、データの整理だけで相当のコストだった。
今回のJCEJのイベントでも、そのあたり、データを綺麗にするとか、そもそもデータ化されていないようなものについてDBを整形するといったことに共通した課題があったように思える。提供元が提供するデータは綺麗に、整理されたフォーマットで一元提供するなど、まだまだ改善しなきゃいけないところはある。
もちろん何を伝えるかというそもそものところは大事ではあるけれども、上記のような各フェーズにおけるコストを下げないとなあ。
とりま、そんなことを感じたイベントだった。とても面白かったので、2015年度版も期待したい。
NHK「技術に走って『ドヤ』ではだめ」。 #jcej
— やまぐち りょう (@d_tettu) 2015, 1月 24
コロコロとゲーム速報「刃」にみる"わかりやすさ"
ふと手にとったコロコロコミック
年が明けてちょっと時間もできたので、ふと本屋に立ち寄った先にコロコロコミックを見つけた。そういえば小さい時に読んでたなあ、サイズも変わってないなあ。ミニ四駆とか読んで大会とか出たなあ。「いけぇ!マグナムトルネード!」
どこか懐かしくなってので買ってみた。「コロコロコミック別冊2月号」。
妖怪ウォッチを激プッシュした内容で、何に使うかよく分からない箱までついてきた。「コンプリートとりつきBOX」なる一品で、カードを320枚ほど収用できるらしい。
作ってみたらこのようなものになったのだけど、これどうやって組み立てるんだ…?テープを使うにしてもガチガチに留めちゃうと開かなくなっちゃう…。
というわけで無理やりパパっと形つくってまあよしとした。この他にカードもついてきた。よくわからないのだけど、ジバニャンのカードが光っているのだからレアなんだろう。それぞれ種類が異なるので、色々と出ているのかもしれない。
小さい時に流行ったポケモンカードやギャザを思い出した。いろいろ集めたなあ。
ひと通り付録を確認した後にその内容を読んでみたのだけど、変なひねりなんてなくてドストレートに分かりやすいストーリー、ギャグのオンパレード。子供向けというものはこんなに分かりやすいものなのか。
「股間に羽根つきのたまが直撃!」→「○玉が3つに!」ドヒャー
「カードバトルだ…あれ、ソードが大根…?」→「大根カードでした」ドヒャー
流動食的な分かりやすさ
もちろんこういったギャグだけではなくて、いわゆる小学生にとってグッとくる(であろう)マンガに関しても、とても分かりやすいものが多かった。それこそ20年弱ほど前の記憶しかないのだけれども、当時のコロコロコミックも同様にとても分かりやすいものだった気がする。
何が分かりやすいって、展開が基本的に「A→B」のみ。「ボケ→ツッコミ」「裏切り→逆転」「葛藤→やっぱり友達」。これだけ。また、難しい表現もない。「あ、これはこういう風に解釈すればいいのね、キャラが大げさに泣いてるし(笑ってるし、突っ込んでるし…etc)」。
解釈、反応に困らない。
文字数も少なめでコマ割りも少なめ。オチの場面はコマをでかくしてひたすらフィーチャー(基本か)。
そんな風に、読んでいると「解釈の労力の少なさ」をところどころに感じる。読者を馬鹿にしているとかではなく(ギャグ自体はちゃんと練られていると思う)、ひたすらに分かりやすい。
ゲーム速報「刃」あたりのやる夫を思い出す。こういうの。
「ハーフの子を産みたい」という理由で外国人向けシェアハウスに住む日本人の女子wwwwww : オレ的ゲーム速報@刃
これもタイトルからして「解釈に労力を使わなくていいよ」というメッセージである。ユーザーは「そこまでしたいかwww」と指をさして笑えばよいだけだm9(^Д^)プギャー。そしてツッコミ待ちのやる夫を見て「ちょっw」とか言えばよい。
分かりやすい。まさに咀嚼の必要のない流動食。ドロッドロの流動食。
ここに情報があるじゃろ?
( ^ω^)
⊃ジョウホウ⊂
これをこうして…
( ^ω^)
≡⊃⊂≡
( ^ω^)
⊃⊂
( ^ω^)
⊃ 意 味 ⊂
どちらを立てているのか貶めているのかよく分からなくなってきたのだけれども、分かりやすいという指標を考えた時にこれって同レイヤーで考える参考になるよなという事例を示しただけなのであしからず。
コロコロコミック編集長によると、つぎのような方針を立てているという。
マンガ表現の流行による変遷はもちろんあるけど、1977年の創刊当時から基本的な表現方法は変わりません。編集方針としてお願いするのは『子どもはマンガを読むのが遅いので、一コマずつ背景までしっかり描くこと』くらい。
(中略)
他誌との違いは、読者を追いかけないことだと思うんです。中学生になった瞬間きっぱり卒業してもらう。既存読者の成長に合わせて雑誌を変えていくことはしません。だからいつの時代も、小学6年生以下の層を確実に掴んでいられる。いわば“ガラパゴス化”していることが強みです。
コロコロ編集長に聞く“マンガを読めない子どもが増えている”の真偽 ―子どもを舐めてはいけない | ダ・ヴィンチニュース
なるほど。
ターゲットの変化がそこまで大きくなければ、確かに表現方法などを大きく変更する必要はないのかもしれない。小学3年生が急にスマホを中心とした情報消費に転換するわけでもないし、知的能力を数年分もかっ飛ばすほどに急成長するわけでもないだろう。
デジタルゲームの登場でリテラシー自体がそれほど急変するとも思えない。
コロコロコミックにしろ「刃」にしろ、「解釈の労力の少なさ」という意味でひたすらに分かりやすい。そして反応しやすい。
「分かりやすい」とは何か、それはある種の流動食のようなものなのだろう。もしかしたらそれは、場合によっては僕らの顎を細らせるものなのかもしれないけれども。
「長すぎて読まない」を体現するようなTumblrの“Year in Review”を眺めて
Tumblrの2014年を振り返る「Year in Review」がおもしろい。
Tumblr 2014 Year in Review
「Fashion」や「Game」など、カテゴリーごとに反応のあった順位が並べられているもの。GIFカテゴリーだとなんかこんなのもあったり。
ふだんはだらだらと眺めて気になるのがあったらrblgと、そこまでヘビーな使い方はしていなかったのだけれども、この「Year in Review」のAboutページに記載されていた言葉が印象深かった。
Tumblr’s Year in Review is a showcase of the best stuff on the Internet from 2014. Follow along for a daily dose of creativity, humor, humanity, fandom, and sharing.
And GIFs. Lots of GIFs!TL;DR — It’s been a great year!
Tumblr 2014 Year in Review — About Tumblr’s Year in Review
Yahoo!CEOが言ってた「TL;DR」
via CES 2014: Marissa Mayer keynote (live blog) | CNET
TL;DR…「Too Long Didn't Read(長すぎて読まない)」。米ヤフーのCEOであるマリッサ・メイヤーが、CESで話していたことが思い出される。
これは「News Digest」というAppを紹介していたくだりで用いられた言葉だ。「みんな忙しすぎるのです。長過ぎるニュースは誰も読まない」。
※Appは各所で既に紹介されているように、1日に1〜2回、10本程度のニュースをまさにダイジェスト形式で読むことができるというもの。
ダイジェスト化する思考
サッカー好きな先輩に教えてもらったのだけど、サッカー界隈では一部で「タッチ集」が流行っているらしい。
スカパーのCMで「ハイライトだけのサッカーは、終わりにしよう」ってフレーズがあったけど、そのうち「タッチ集だけのサッカーは、終わりにしよう」って言い出してもおかしくないな。
— でろりん (@derorinkuma) August 7, 2014
タッチ集とは、ある特定のサッカー選手の出場した試合におけるボールタッチシーンのみを集めた動画のこと。
試合をすべて見なくても、気になる選手のボールタッチシーンだけを素早く確認できる手軽さから、ネットで圧倒的な支持を得ている。
もっと効率よく知りたい…サッカーのタッチ集にみる、人々の「ダイジェスト思考」がもたらすもの - NAVER まとめ
そりゃなあ。
「別に見たくもないところを見る欲求なんてこれっぽっちもなくて、好きなところだけ見たいねん!」という気持ちは分かる。僕もYouTubeを見るときはちょくちょく飛ばして見ている。あれ、常識でしょ?
以前書いた「2015年は長文が〜」のいきなりのカウンターみたいになってきたが、情報消費の環境はそのように変化していると思う。スキマ時間で使われる(はずの)スマホの台頭で。
2015年は「バイラル」から「長文」に移り変わるのかもしれない - d_tettu's blog
このことについて「長文を読まなくなると考える力が〜読まなきゃあかんで〜」とか、「結局長いのなんてただそれだけで読まれないんでしょwwそういう頭になってるんだってwww」なんて言うつもりはない。
ここで立花隆さんがNHKクローズアップ現代のストーリーをぶち壊し(?)にした輝かしい一瞬を思い出してみたい。
(“読書ゼロ”の知的劣化や偏った考え方の広がり 学びの機関がスマートフォンやネットとなった場合どう見るか?)
知的環境そのものの変化の中で、むしろこの変化を利用して、どんどん自分の知的能力を膨らませていってる、そういう若い人たちが一方でものすごくいるんです。だから、それは一概に、こう、ああとは言い切れない。
(中略)
例えば、本を広げて、あるいは新聞広げて、この記事をちゃんと読むか、あるいはさっと目を通すだけにするか、その判断っていうのは、恐らく1秒以下っていうかね、それぐらいでやってるはずなんですよ、日常生活において。
ただそのこと自体はそんな驚くべきことじゃなくて、だから、そういうものを語るときにこれまでインプットとアウトプット、その2つでしかものを考えていなかったけれども、今はスループットという言葉があって、だから情報が頭を通過する、そのスピード、その内容、そちらを問題にする。
スループットがものすごい勢いで、どんどん増えてるっていうのが、現代の一番の特徴なんですよね。
広がる“読書ゼロ” ~日本人に何が~ - NHK クローズアップ現代
情報が多すぎる、まさにマリッサ・メイヤーが言うように「みんな忙しすぎる」昨今。環境に合わせて方法論が変わっただけで、脳の働きというか、知性の動きみたいなものって根本的にはそう簡単に変化しないと思う。
人間の脳が自然と行っていた知的活動に合わせて、例えば人や機械がそれをサポートするようにカタチを整えてくれる、そしてそれによってまた別の知的活動ができるようになる。
少なくとも、それは「進歩」と呼ばれるものだと思うのだけどどうだろうか。
2015年は「バイラル」から「長文」に移り変わるのかもしれない
バイラルメディアが何かと話題を呼んだ2014年。ゴミだのクズだの罵詈雑言の雨あられが飛び交う割に、イマイチぱっとした結果も出てなさそうな印象でどこか切なくなった2014年。価値ある何かって出てきたのだろうか。
海外ではこれまでも「バイラルメディアがパねえ」などとその手法がもてはやされてきたが、journalism.ukの記事によると、ハフィントン・ポストUKではその関心は「長文」に移りつつあるようだ。
From viral to longform: Why the Huffington Post has set its sights on long reads | Media news
「速報は記者を『出来事の奴隷』にする」
「2011年からこれまで、私たちが求めていたことのひとつは大量のユーザーを生み出すことで、そしてそれらの多くはバイラルするストーリーを書くことやコメント(会話)によって成された」と話す、ハフポUKの編集長。
「『ロングフォーマット』は成長するだろうと考えているんだ...とりわけUK、選挙を控える中でね」。
彼にとって「速報(Breaking News)」はハフポにとってやるべきことかどうかは、ちょっと疑問符がつくようだ。速報は彼にとって、記者を「出来事の奴隷」にせしめるものだという。それよりは、多くのパブリッシャーにとって「なぜ」「どのようにして」というような、分析的なコンテンツの方が価値があるのではないかと。
コモディティ化する「速報」
この速報と二報モノについて、NewsPicksの佐々木さんが過去に言っていたことが思い出される。
速報性という意味では、我々は通信社や新聞社と戦おうとは思っていません。約100名の記者をベースにした企業記事を、通信社や新聞社に2〜3時間の遅れを取ったとしても、新しいストーリーや分析を加えた記事を掲載したいと考えています。これを「クオリティの高い第2報」と呼んでいます。
(2ページ目)なぜ東洋経済オンラインは4カ月でビジネス誌系サイトNo.1になれた?編集長に聞く | ビジネスジャーナル
速報は既にコモディティ化していて、その役割を見出しづらい環境にある。経済系媒体でもロイター、時事などの通信社、日経がいて、じゃあ速報で勝負する意義ってどこにあるんだろうと考えると...それよりはストーリーを作って「意味付け」した方が価値がある。
速報をやりたがる個人としての気持ちはわかるが、そこに価値があるかというとなかなか難しい昨今だろう。
200文字で説明できない事柄
ハフポUK編集長は、来年やっていきたいものとして2つの記事を例に挙げた。その一つが、ゲイを告白したキリスト教信者のロックスターについての物語だ。
The Christian Rock Star Who Came Out, Became A Gay Role Model And Found Acceptance
この「Beyond Belief(信じられない)」とのシリーズモノの、人について語られた物語がどのようにシェアされているかを見ると、それがバイラルのために片手間に作られたものではないことが分かるだろうと、彼は話す。
また、このような物語形式について、政治的思想(political ideaとは書いてあるが、いわゆる政治以外のことも含まれるだろう)を明らかにする場合の助けにもなると、別の記事を紹介した上で続ける。
「それは200文字で表現できないよね。君はツイートで反応することはできるけど、何を本当に意味しているのか、何について話しているのか、彼らの信念は何なのか、君のグッときたことについては、そんな少ない言葉じゃ表現できないはずだ」。
ハフポ編集長は、長文型の情報消費をサポートするものとして、「immersive(没入)」と「interactive」、「simpler combination of text and images(テキストと画像のシンプルな組み合わせ)」を挙げるが、そのあとに「君が書いているものに『中身』があること、その言葉が強くて意味深いものであること」も同様に大事であると話す。
ハフポUK編集長は上述のように話すが、とはいえこのスマホ時代に「長文」一辺倒で良いかというと、もちろんそうではないだろう。
有名な図として「クオーツ・カーブ」を思い出す。
この哲学に行き着いたのは、トラフィックを分析したところ、デジタルでよく読まれるのは短い記事か長い記事のどちらかだという分析結果を得たからでもあり、700語台の記事は無駄が多いと考えるからでもある。
アメリカで躍進中のビジネスニュースサイト『クオーツ(QUARTZ)』 その編集方針と経営戦略を聞いた | New York Sophisticated | 現代ビジネス [講談社]
上述のように、長文はもちろん読まれないというわけでもない。しかしLivedoorの「ざっくり言うと」が示すように、スキマ時間での使用が目立つ(と思う)環境下では、ただ長文であるだけでは厳しいだろう。
スマホ時代の「ざっくり言うと」って何が大事なの - d_tettu's blog
ハフポでは、長文の序文に「short version」を置いて掲載している。しかし、編集長が言うには、分析によると、ユーザーはそれよりもむしろ本題、文章の全体像を知りたがるようだ。
Livedoorの「ざっくり言うと」も、例えばvingowの要約にしても、ただそれだけが価値を成しているというよりは、本文に入るための--ユーザーがその文章を読むか否かという判断のための--判断材料であることに価値があるのかもしれない。
また「ざっくり」とはちょっと異なる軸として、長文型のコンテンツへの疑問として次のような声も出ていた。
ロング・フォームのメディアは、メディアやってる人間の夢かもしれないが、よりスマホに軸が移る情勢の中では「ちゃんと読まれるか?」という点で疑問。ポリタスやってみて感じたのは、一つ一つは簡潔な文章を、より雑多に読んでもらう、いわゆる訪問別PVの高いメディアの可能性。
— たちぞの まさひこ (@mshk) 2014, 2月 15
BBCのモバイル担当エディターが同じこと言ってたRT @mshk: ロング・フォームのメディアは、メディアやってる人間の夢かもしれないが、よりスマホに軸が移る情勢の中では「ちゃんと読まれるか?」という点で疑問。ポリタスやってみて感じたのは、一つ一つは簡潔な文章を、より雑多に読ん
— 古田 大輔 (@masurakusuo) 2014, 12月 20
@d_tettu @mshk BBCのエディタ-が口にしていたのは「記者はロングフォーム書きたがるが、読まれてないよ」ということでした。とくに携帯では「とにかく短い記事。読者はジャーナリストではないことを理解し、簡潔に書くべきだ」と。
— 古田 大輔 (@masurakusuo) 2014, 12月 21
「パパッとやってトラフィック稼ぐ」の限界
長文でどうだ、スマホでどうだは別として「片手間で作られたもの」で稼ぐ限界はいずれ来るだろう。
「200文字の限界」が示すように、個人の趣味趣向、思想を表現する手段として、2014年に流行ったようなキュレーション()は限界がある。そして、「パパっとやって」共感を生むような時代は近いうちに終わりが来るのではないかと思う。それはトラフィックを得る手段としては常套句だろうが、じゃあそれによって「グッとくる」体験が得られるかというと、そこまで単純じゃないでしょと。
食傷気味よね。
個人的にも、どこかで見たようなありきたりな文章よりも、「誰が喜ぶねんこれwww」であっても熱量のある尖った文章を尊びたい。多様性万歳。
ちなみに、先週弊社のイベントで @kensuuとKDDIの森岡さんがメディア戦略の話したのですが、けんすうさんは「スマホになって没入感が増す」と本格的な文章の需要が伸びるという予想をしてました。この辺は各社実際にコンテンツ出しながら感覚をアジャストしてる最中だと思いますが。
— たちぞの まさひこ (@mshk) 2014, 12月 20
ついでに。イベント後に @kensuu と @tsuda と森岡さんの食事の席に同席したのですが「原稿料の高いウェブメディアの時代が来る」という話が盛り上がって面白かった。要するに、ちゃんと手をかけたコンテンツをウェブでやるようになる。
— たちぞの まさひこ (@mshk) 2014, 12月 20
個人的にもこの点は激しく同意ではあるのだけど、ウェブメディアがそれを支える収益構造をしているかというとなかなかそれは厳しい。
とりわけ、新聞社やキャリアなどバックのある一部を除いて、このスマホ時代では(広告単価が...泣けちゃう)。
というわけで、2014年にも話題に上がっていたネイティブアドや動画広告が、「長文」の前に本格到来するのではないかと思う。
そこで広告単価を上げて収益性を上げて、「本格的な文章」(比較的高コスト)が供給できるのではないかと。
もちろんそこにはいろんな課題があるのだけど、それらを解決するためにガイドラインなどが整理されたり環境整備が進む...そしてそれと同時並行で「本格的な文章」が試行錯誤される、そんな2015年になるのかもしれない。
ここまで考えてあーくっそなげえ文章になってしまったと思いながら、労働して年越ししたくないなあと空を見上げる。
貴殿らがきゃっきゃうふふして年末を楽しんでいるあいだでにこちらはお仕g)
「ネットメディアやってるならこれ見とけ」なグラフが面白いfrom BI
Business Insiderが8日に公開した「THE FUTURE OF DIGITAL: 2014」。リサーチチームが調査して毎年公開しているスライドで、これが非常に面白い。メンバーは詳細のデータやPDFなどをDLできるとのことだが、スライド自体は無料で見られるのでサラーっと見るだけでも価値がある。
THE FUTURE OF DIGITAL: 2014 [SLIDE DECK] - Business Insider
日本市場に限った話ではなく世界規模の話(主にUS)ではあるのだけど、ここから幾つかメディア界隈に関係するものをピックして、メモ代わりに書いてみる。
だけじゃない「スマホシフト」
世代間でシフト進む
スマホが成長を牽引
だけどスマホだけじゃないよね
「スマホシフトだ」「デジタルの世界はスマホが伸びを支えるんだ」とそこかしこに言われてはいるのだけど、単純な「シフト」ではなくて、マルチスクリーンの時代だよね、という話。
スマホの出荷台数は右肩上がりだけれども、PCについても無視はできない。
ただPCがこれ以上伸びを見せることはないので、どこでスウィッチするか - PCを維持しつつどうやってスマホに体制を移行させるか - という点が肝になるのかなあと。
関連して、スマートニュースの藤村さんはこの潮流を「断片化」と呼んで以下のエントリーを書いた。
IKEAのベッドと猫をめぐるインターネットの物語
「なにかね?」#今日の猫
その猫が生まれたのは2012年の秋のことで、細かい日付までは記録されていない。猫はやがてNPOに預けられて多くの猫たちとその日々を過ごした。やや臆病ではあったが、猫好きのする性格で特にささくれもない毎日をおくった。
それから暫くして「ウェブ男」が猫を引き取った。インターネット大好き野郎で編集家業。スマホばっかり見ているので、そんなあだ名がつけられた。「さすがウェブ男さん、メシの画像とかすぐInstagramにあげますね」。彼は後輩の顔を見てニヤッとする。ちょっと嬉しかったのだ。
猫は我が家でものんびりとした日々を送り、お腹が空けばウェブ男が寝ていようとにゃーにゃー鳴いて要求し、満足すれば彼の横で丸くなった。
静かな日々だった。
ウェブ男は猫に何かを与えるのが好きだった。にぼしがあればにぼしを与えてやり、財布に余裕があればお菓子を与えた。そんなわけで猫はすぐに太った。だってしょうがないじゃないか、ほしがってるんだからと彼は思った。
そんな彼がIKEAのベッドに出会うのは時間の問題だった。彼がいつものようにTwitterを眺めていると、それはタイムラインを流れてきた。
約2000円で買えるIKEAの人形用ベッドが「お猫様の専用ベッド」に最適
「へーこれいいじゃん、これからの季節に猫も暖まれそうだし」。彼は猫を抱いてほれ、これどうだ?と見せてやった。お前のためにまた新しいおもちゃが増えるんだぞ。
猫はウェブ男が何を言っているのかは分からなかったが、IKEAのベッドが何であるかは理解できた。以前に似たようなものを見たことがあるからだ。
【ネコ好き必見】IKEAのミニベッドで和んでいるネコたち | CuRAZY
2000円で買えるIKEAの人形用ベッドが猫にピッタリ! - NAVER まとめ
あーあれか、と猫は思った。寝っ転がれる人形用のベッドでしょ?どうやって見たかはさておき、とにかく猫はそれを以前に見ていた。誰かが見せたのかもしれない。でも、それは少なくともウェブ男に知る由はない。インターネットでは全てのことが起こりうるのだ。
猫は興味なさそうに鼻をすすんと鳴らしてデスクから降りた。いつのまにか喉のゴロゴロは鳴り終わっていたし、しっぽは不機嫌な猿があたりをうろちょろするように所在無く動き回っていた。
猫は「オリジナル」とは何かについて、ぼんやりと考えていた。猫は何かにつけて「オリジナル」について考える指向性のようなものを身につけていた。もともと自分のルーツが曖昧だからかもしれない。それは猫にとって、夏の夜に頭上を飛び交う羽虫のようにつきまとう存在だった。
そのようにして猫が考えていると、少しずつ猫は悲しくなってきた。Twitterの画像をEmbedした記事を作る、誰かがそれに何かを感じてシェアをする、あるいは友人に見せる。「かわいい//////」。健全だ。何も問題ない。でもそこにオリジナリティはない。
何かが悪いというわけではない、でもそこには何かが欠落している気がする。あるいはそれは資本主義のようなものなのかもしれない。今月のPVとシェア数が目標について未達ラインです、残りの半月でカバーを...
「君は色々と考え過ぎだと思うね」とウェブ男が猫を抱き上げた。「何も問題ないなら、どこに問題があるんだろう?」
猫は、いつものないものねだりなのかもしれない、と思った。お菓子があるときはにぼしを欲しがり、にぼしがあるときはお菓子を欲しがる。たとえそうだとしても、やっぱりそれについて考えないとダメなんじゃないのか、やっぱり汗をかかないとダメなんじゃないのかと猫は顔を洗った。比較的、真面目なのだ。
ウェブ男は猫のそんな様子にため息をついて、仕方ないなあとキッチンの戸棚を開けた。ご飯の時間だ。
猫は戸棚を開ける音を聞きつけてウェブ男の足元まで擦り寄ってきた。
そうして猫の頭からすっかりオリジナリティについての思考は消え去る。まるでインターネットのあらゆる話題のように...(アイスバケツチャレンジって誰か覚えてるっけ)。
BuzzFeed急成長の立役者が語る「データサイエンス」への考え方
from :The Data Science Venn Diagram — Drew Conway
9月末から始まったBuzzFeedのデータブログ。初回を飾ったのは、先日VPの「Publisher」に昇格したDao Nguyenでした。
彼女はたった2年で1.5億ユーザー/monthにまで成長させた立役者として知られています。彼女がVPとして引き上げられた時、同社CEOのJonah Perettiは次のように述べたそうです。
彼女は新聞の権威を引き継ぐものではないし、ビジネスや広告売上、ましてや新聞販売に責任を負うものでもない。
それでも彼女は会社を率いる。「Publisher」として、テクノロジーやプロダクト、データ、パブリッシングプラットフォームに関わる全てを統括する。
BuzzFeed Names Dao Nguyen Publisher | Re/code
彼女が実際にBuzzFeedで何をしたのか、詳細に書かれた記事はあまり目にしたことがありません。読んだことのあるもので挙げてみると、Pinterestからのリファラーを2位に押し上げたり、モバイルからのトラフィックを最大化したり、サイト上でのコンテンツの配置に関するアルゴをいじったりとしてきたとか。
この記事の中で具体的なことにはふれられていませんが、彼女の存在がいかにBuzzFeedの成長を促したかということは書かれています。
編集主幹のBen Simth曰く「彼女は知的なひらめきに溢れているよ(She just has a lot of intellectual wattage)」とのこと。
※意味があってるかは自信ないけどこんなニュアンスかなあ
The Data Genius Behind BuzzFeed's Success | Inc.com
Daoが語る「データサイエンス」の考え方
そんな彼女が、データブログの初投稿の中で、「How BuzzFeed Thinks About Data Science」とするエントリーを投稿。
これ以後も興味深い分析が投稿されていますが、まずはこの投稿の中から、BuzzFeedのデータへの姿勢がどのようなものなのか、9つのポイントについて記してみます。
1. データは匿名化して扱う
まず、私たちは個人情報を尊重します。全てのデータは匿名化して扱い、厳格なアクセス権についてのポリシーもあり、技術的なセーフガードも構築しています。
2. 正しい「問い」がなければ、有用な「答え」はない
BuzzFeedではデータアナリストチームが分析を統括しているので、データを落とす前に、編集者が直感的に何を理解しようとしているのかを話し合っています。
問題が複雑になろうとも、正しい問いを持つことの重要性は他の何よりも先立つでしょう。
3. データを疑え
ビッグデータ信仰は、そのデータの量と信頼性を同等視します(集めて分析すれば信頼性が増すってもんじゃないよね的な)。
実際、そのデータは人間の書いたコードによって収集されたものです。バイアスだってかかるし、どのモデルの仮説だって間違う可能性はあります。
4. データは起こったことについて示すが、「なぜ」については示すことは稀だ
何が起きたかを理解すると同時に、その理由について分かったのだと思い込むべきではありません。
時々、データは私たちに何が起こりうるのかを示してくれますよね。予測的な分析は私たちの分析のコアな領域でもあります。
しかしそれでも、私たちは相関するデータを元に優れた予測アルゴを作ることはできますが、それは、私たちが予測しようとしているものの「なぜ」を理解していると意味するものではありません。
相関関係と因果関係は同じではないのです。
5. データは組織によってその力を変化させる
BuzzFeedには、勢いがあって優れたデータサイエンスチームがありますが、それはそれを後押しする企業文化があってこそです。
6. データの奴隷になるな
データはあなたに選択肢を知らせるべきもので、戦略を決定させるものではありません。
7.全てを統べる測定法などない
DAUだったりMAUだったりSNSでのフォローワー数だったり...etc
BuzzFeedはアートやサイエンス、良い判断の組み合わせでできています。バランスを理解することは競争上の優位性を生むのです。
8. データは十分に利用され、過剰に宣伝されるもの
どのメディア系企業もデータサイエンティストについて何らかのレベルで考えている、この昨今。
ラベリングに巻き込まれないように、私たちが解決する問題にこそ、フォーカスしていきましょう。
9. データは楽しい!
まだ学習していないことや、構築していないモデル...私たちはそんなことを楽しんでいるのです。同じプロジェクトなど一つもありません。
BuzzFeed Data Blog
※誤訳があったらごめんなさい、優しく指摘してください。優しさ大事。
これの他にも分析あれこれ
このDao Nguyenの投稿の他にも、例えばシェアと読了時間についての相関関係や、二者間の読んだ記事から別の好みそうな記事を推察する取り組みなど、大変興味深い投稿があります。
それらについての紹介はまた今度するとして(たぶん)、今回はBuzzFeedのデータへの姿勢を紹介して終わりにしようかなと。
新興メディア隆盛の背景にはテクノロジーが〜という話は各所で聞きますが、実際にどのような体制でどうプロダクトに組み込んでいるのか、具体的な話が出てこないので非常に気になりますよね。
そりゃまあ出ねえよっていう話ではありますが...だからこその競争原資なんだろうなあ。
日本市場に参戦してそこらへんのバイラルメディアが死屍累々になるという未来予測についてはどう考えているのだろう。
「ニュースメディア第二世代の行方」書き起こし
東洋経済主催のパネルディスカッション行ってきた
写真は東洋経済編集長の高橋由里さん
メモまでに書き起こしなんぞ。誤字や齟齬などあればご指摘くだされ。敬称略。
また、ざっくり概要はこっちに。
「メディア第2世代の行方」語られたバイラルメディア隆盛の構造 - d_tettu's blog
メディアはどう生き残り、どう成長するのか 新旧の企業幹部が語る - withnews(ウィズニュース)
ちなみに具合が悪くて途中で帰ったので、2部はメモってません。ごめんよ。
SNとGunosyどっちが勝つ?会場の反応ではSNでした
「どっちが勝つと思う?」by司会者→会場の人たちはSNに手を挙げる。
Gunosy福島「ニュースアプリの市場はまだ5倍、海外を入れると10倍くらいの規模になっていく。一緒に盛り上げていきたい、っていうのを思う。ライバルは時間を奪い合う意味でゲームとかだったりする」
SmartNews藤村「全ての方々と握手をしたいと思っている。みんなパートナー」
福島「SNとの違いでいうと、情報を知りたいという潜在的意識のある方に、どう情報を届けていくか、そういった部分で違いが出るとは思う。この市場は違いが出にくい。検索もそう。それぞれそんなに違いは出ないのだけれども、ちょっとした部分で違いが出て、共存している。今はニュースを読んでないけど、そんな層にどう届けていくかっていうところで、SNもうまくやっているので、その領域で競争相手としてやっていけたら
紙の人をどう持ってくるか、という話
・キュレーションアプリが流通を担うけど、コンテンツ側としては?
産経・土井「産経ニュースをやっているけど、購読していない人に対しても、産経グループの情報を届けていくか、という課題意識はある」
東洋経済・山田「雑誌とウェブでコンテンツが食い合うと、雑誌が消費されなくなると考えている。食い合わない状態にしたい。なので、紙からの転載はしていない。ウェブはウェブでオリジナルの記事をやっていきたい。iPhoneとかデジタルな記事を多く出したり。そういった取り組みをすることで、オリジナルな記事を出して支持が得られるんだという実感はある」
ハフポ高橋「前任の松浦がインフラを作って、その上で私が構築していけたら。これから各国で立ち上げるが、モバイルビデオに力を入れている」
キュレーションアプリでも動画は強いの?
藤村「ニーズは感じるが、まだトライアンドエラー。動画をたくさん集めると喜ばれるのか、チャンネルを集約してテキストもあれば動画もある、そんな状態が良いのか。仮説をもって取り組んでいきたい」
福島「Gunosyでも提供していてニーズは感じるが、個人的にはFacebookでも動画を提供しているのを見て、やっぱり見ちゃう。自動で始まったりするのが意外と大事だなあと。音無しの動画だったり面白いなあとは思っている」
藤村「受動的に消費の仕方をするかというと、それはペルソナとしては違うかなと。メディアの各フォーマットごとに消費の仕方があって…ラジオとか、新聞とか。そのコンテンツのフォーマットによって、提供の仕方が変化している。蓋然性が高くなってきている」
藤村「誤解はして欲しくないのですが…スマホで長文は読まれる。特徴や特性、媒体に対するロイヤリティーなんかの組み合わせで、長文を読む人はいる。東洋経済さんとの取り組みなんかで分かってきたとこはある」
高橋「ものによる気はする。長文分析系のネタで、しっかりしているものであれば、読まれる」
高橋「スマホという閲覧特性でいうと、韓国と日本はぶっちぎってる。5割を優に超えている」
土井「読まれるものは読まれる。滞在時間が10分っていう記事もある。長いものが読まれないということはない」
山田「東洋経済はもともと長いw。ページネーションの意図としては、長いと読みづらいだろうなあという考えのもと。読まれるものはちゃんと最後まで読まれるし、スマホの環境が整ってどんどんハードルは下がるだろう」
それで食えるの?マネタイズどうやっていくの?
藤村「ポイントは、スマホのサイズ感の中で、劣悪なクリエイティブをユーザーに見せてお金を稼いでいくという、悪循環を断たなきゃいけない。それはここにいらっしゃる皆さんで協力して断つ必要がある。小さいスクリーンの中で良いものを見せたり、良いフォーマットを見つけたり…小さい世界で、大きなクリエイティブを見つけたい。どっちかというと、あの小さい世界ではダメなんだという意識を、みんなで持ってしまっているのが問題。年内にはみなさんに何かしらの解決策を提示できたらと思っている」
藤村「1pに15個の広告をはっても、役に立たないことが証明されているように思う。であれば、1つでもいいから、ちゃんとしたクリエイティブを提供する、それをスケーラブルにできれば。2、3種類でも、良いクリエイティブを提供して、悪循環を断ちたい」
藤村「(年内に何か出すということについて)皆さんがスマホで見ていて、これは気持ちが良いな、というものを。我々はこう考えています、というものを提示できれば。こういう商材でいきたい、他はやらないんです、そんな姿勢を。今までネットは後退してきた。広告を大きくすれば、あと1つ入れたら...そんな風にしてきた。身をもって実感してきた。広告ビジネスを変える必要性がある」
福島「CPにお金を回すことは前提として意識している。うちの配信システムを入れていただいて、レベニューシェアをする、そんな取り組みはしている。1pvで1円稼ぐことができる、そんな世界を作っていかないといけない。そこがキュレーションアプリの課題」
実際に編集部を持っているメディアを支えられるかどうか
土井「全てのメディアが、今の相場市場と比較して、良い値段で取れるかというと、厳しい気はする。紙の取材網をネットでまかなえるかというと、厳しい面はあると思う。媒体として広告出向元からどのように評価していただけるのか、そこへの課題意識がある」
高橋「ハフポも一緒。ブランド力を高めて、広告価値を高めていけるのか」
山田「PCもスマホもビジネスモデル自体は変化していない。Yahoo!などを取材したりしてきたけど、地道に信頼を獲得して、広告価値を獲得してきた。銀座一丁目戦略。人が集まれば、広告価値は高まるんだと。東洋経済も10月から広告をたくさんとっていく体制をとった。PVとってもマネタイズ体制が整っていないから、PV貧乏っていうのが起こっている。そうなると安易に課金に流れようとしたりする。だから、本当に汗をかいてやってるのか、というところをもう一度見直したい」
ジャーナリストの名前のブランドって、日本でそんなに高くないらしいけどどうなの
・ブランドネームでどこかに読みに行く、という人は日本だと3割くらいしかいない。海外だと6割くらいだけど。個別メディアでやるとなると逆風だとは思うが、どうなの?
藤村「キュレーションという枠組みで、個別の名前が希釈化してしまうという考えはあるのかもしれないが、うちでいうとチャンネルプラスというバーティカルで提供する場を設けている。そこではゆっくり、ちゃんとコンテンツを読む場となっている。上澄みを読んでいく喜びと、ブランド単位で読んでいくものと、両方あると思う。非常に高い成長性と、余地があるのでは。自分たちがやっているビジネスを振り返ってみると、その調査はどこか違和感がある」
福島「マーケティングの話かなあと。Gunosyと組んでやったら別ルートでの流入も増えたとか、接点の問題はあるのでは」
土井「自分の書いたものが広がるのは単純に嬉しい。キュレーションアプリ、ポータルサイトの存在はありがたいと思う。Yahoo!とかでどこの媒体とか気にされているかというと、そうではないなというのが感覚。接触ポイントではあるのだけれども、エンゲージメントポイントかというと、ちょっと」
ユーザー層に与える影響について
・産経は比較的保守的で、若い人にリーチ出来るキュレーションアプリは良い接点ではあると思うのだけど、どうか。
土井「良い接点ではある。スマホのユーザー数の増加はある。デモグラの変化でいうと、うちが弱かった20代の女性だったり、スマホの比率が高まったり、そういうのはある」
高橋「デジタルファースト。若い人に強くないと、生きていけない。ビジュアルエレメンツ、そして独自のコンテンツ、それが強いところが生き残っていくのでは。ハフポ創業者が重視しているのは、QOL、生活の質に関する記事。これが読まれる。主婦だったり。シビックジャーナリズムを大事にしていきたい」
山田「紙の方が年齢は上。オンラインのメディアは書籍と意外と仲が良い。人を育てる場がオンラインにきている。そこで鍛えて書籍を書いてもらう、そんな面も。紙との連動、クロスメディアをやることはできる」
山田「紙とオンラインは内容が違うので、客層は異なってくるんだろうなあと。ブランディングをやっていないから、ユーザーは人だったり媒体だったりで選ぶことがなかったりする。昔もそうだったかというと、記者なんかは個性的な人がいたりする。媒体側が平準化されている点もあるので、逆張りで変わった切り口を出したりしていければ。いい記事が出せれば、いい読者がついてくるとは思っている」
質疑応答
・欲しいものと必要な情報をミックスするにあたって、どうなっていくのか
藤村「それがSmartNewsだと思っている。安心してください。まだまだできていないこともあるとは思うが、『おれにとって重要』そんな情報をどう取り出すのか、そこに取り組んでいきたい」
福島「そんなミックスが簡単になるかというと、ならないとは思う。コールドスタート問題をどう解決するのか、それは技術の問題ではないと思っている」
・バイラルについて、キュレーション側とCP側でどう思うのかby弁護士ドットコム亀松さん。
福島「ソーシャルで時間を使い始めた、というのがあると思う。検索とは構造が異なるハックをしなきゃいけなくなった、そんな構造があると思う。意味があるかないかでいうと、意味があると思う。コンテンツとはまた別に、どうやって届けるのか、という点を問うてるのかなと。その一つの解としてバイラルメディアがあるのではと」
福島「技術的にはバズをデータで可視化して、こうすればバズるという解析で技術的にも面白い」
山田「面白い。技術とか面白いが、数年度にはどこでもやっているだろうなという意味で、先駆者。マーケティング、テクノロジーの最先端がある。これからも伸びていくのでは。お金が集まると、オリジナルのジャーナリズムをやろうとか、なっていくはず。今はとんがっているけど、少しずつ当たり前になっていくのでは」
ニュースメディアの将来について一言
山田「明るいと思う。今は成長痛。読者がテクノロジーを通じてニュースを消費できるようになったので、適応すると成長する」
産経「明るい。ただ、同じものを10社も20社もかいていても仕方ない」
高橋「楽しくて仕方ない。色んなDNAが混ざり合ってニュースを作っている。これから先を見ていくと、最後はジャーナリズムに対する情熱が大事だと思う。そういったDNAは大切にしていきたい」
福島「明るいと思います。Gunosyとしては、その人が大事にしているものを届けたい。健全な競争を歓迎したいが、良いコンテンツをいろんな人に届けて読んでもらう、そんな姿勢を共有して、みんなでデカイ市場を作っていきたい」
藤村「このなかでたぶん一番年齢が高いw みんなで育てていけたら。難しい点は、多様性を作り出すという点。ビジネスありなしでも。あらゆるレベル、層においても担保していくこと。同調圧力が働きやすい世の中ではあるけど、多様性を認めたい、そこに加担していきたい」