@d_tettu blog

メディアとかウェブとかネコとかそこらへん。たまに日記。

インターネットで知らない誰かの言葉に出会う、ささやかだけど確かな幸せ

「人生を豊かにするのは、ささやかだけど確かな幸せである」と、ずーっと昔に森鴎外が言った。どの小説だったか。この言葉がすごく好きなんですよ。

ボードゲームも読書も猫と遊ぶのも自転車も楽しくはあるのだけど、インターネットで瑞々しい文章に出会うのはそれに勝る喜びがある。

Twitterでもブログでもなんでもいい。誰が書いたか知らないけど引き寄せられる、胸の奥の方からぐわ〜ってじんわりくる文章がある。

この前、Tumblrで就活中の学生のものと思われる日記を見つけた。これがすごく良い。

夜、バスが来ないのに焦れて初めてタクシーに一人で乗った。四千円分道路を流しながら、ずっとこうしてたいと思った。どこにも行かれないのはわかっている、わたしはわたしの足でしか歩かないからほっといて。

悪い恋人

こんなおとなになりたかったんだっけ、と23時の街を見下ろしながらぼうと思う。霧が出ていたけれど、青葉城址から見下ろす夜景はとうとく煌めいていた。東京と比べたらなんてちっぽけな、所詮子供騙しのような都会で、けれど、これらは確かにわたしたちの生活が詰まったひかりだ。三年間こんな街に住んでいたんだね、全然しらなかった。

悪い恋人

Tumblrを何気なく眺めていて流れてきた日記なのだけど、グッと引き寄せられた。ある一時期にしか見られない限られた風景のような。瑞々しい、だけど少しだけささくれのある言葉選び。

自分じゃ書けないなあ。

場末の店でひとり飲むのも好きで、隣り合ったおじさんと話すことがある。休日の16時からチューハイを飲んで、野球を見るかクロスワードパズルをするか、そんな感じでだらだらやってるおじさん。

これくらいしか楽しみがないんだよねえ、なんて雑誌のクロスワードのページを開きながら話してくれる。これ分かる? うーん難しいですね。ところで……と昔の話などを聞く。

インターネットで名も知らぬ人の言葉に出会う、飲み屋でおじさんの話を聞く。特別な何かはなにもないかもしれない。でも、そこには確かに彼 / 彼女の物語がある。その一端を少しだけ聞かせてもらっている。

そんな瞬間は、自分にとっての「ささやかだけど確かな幸せ」だなあと思う。

ともあれ、この人の日記すごくいいです。暇なときに読んでみてください。

hiraite95.tumblr.com

あ、冒頭の森鴎外の言葉はデタラメです。