@d_tettu blog

メディアとかウェブとかネコとかそこらへん。たまに日記。

Snowpeakのカタログがすごい。2017年、読んでよかったおすすめしたい本

昨年もいろんな本を読みました。ただ、忙しさにかまけて未だに積んだままの本も多く……この年末年始に少しは消化したい。

まあそれはそれとして、印象に残った本をいくつか挙げていきます。

美しい街

戦前〜戦中の詩人、尾形亀之助の詩集。どこか終末感があるというか、世界の端っこから世界を見ている感があってとても良い。それでいて悲観的なわけでもなく、ささやかな美しさを見出すことができる言葉の数々。

私は夜を暗い異様に大きい都会のようなものではあるまいかと思っている

そして

何処を探してももう夜には昼がない

帯に「特別な詩人」とありますが、これはまさに"特別な詩人"ですね。現代じゃあまず見られないのでは?

夏葉社の本はいつもいい。

忘れられた日本人

宮本民俗学の代表作。京都にふらりと旅行をした際になんとなく読んでみたのですが、これがどハマり。超面白い。足を使って集めた情報がこんな風に紡がれていくのか、という発見もあれば、なるほど村の寄り合いという場はそういった成り立ちをしていたんだな、といった発見もあり。

ぼくは同書でも「土佐源氏」という章が好きです。80歳を超えた盲目の乞食の老人が、どのようにして生きてきたのかという自分語り。グッとくる。

はじめて二人が関係したのは春じゃった。それから秋がきて冬にかかるまえじゃったろう。おかたさまは風邪をひきなさってのう。それがもとで肺炎になって 、それこそポックリ死んてもうた。

わしは三日三晩、寝込んだまま男泣きに泣いたのう。

このおかたさまなんですが、今で言う不倫相手です。でも、それがまた人間臭くて泣ける。このあと、宮本常一の本を読み漁りました。

Snowpeak カタログ 2018

カタログといえば商品紹介がメインだと思うじゃん? これ、違うんです。Snowpeakがどのようにして作られてきたかという社史です。「戦後の日本人と自然との絆をも描き上げた、永久保存の一冊」とのコピーは伊達じゃない。

創業者がどのような思いで会社を築いたのか? 後継者の山井太氏は苦難をどう乗り越えたのか? そしてそのとき現場社員は?

かつてのプロジェクトXを思い出させる描き方とストーリー。Snowpeak会員だったら無料で一冊、会員じゃなくても1000円で買えます。ウェブでも読めるようにしてくれたら広めやすいのになあ。

失われたドーナツの穴を求めて

中身はタイトルそのまま、ドーナツの穴についていろんな専門家がアレコレ論じたという本です。そこまで難しいものでもなく、歴史的にみるとドーナツは〜とか、哲学的には〜みたいなことがつらつらと書かれています。

一つひとつの論考ももちろん興味深いのですが、読んでいるうちに「学問とは何か」を遠因的に感じさせる点がめちゃ面白い。あらゆるものは学問できる、というメッセージがひしひしと感じられる。

考えようによってはドーナツも歴史である、哲学である。

食べる

食べられるものと、食べ物の違いはどこにあるのか? 文化人類学者・西江雅之さんの本。食べることの文化的、習慣的な起原はどこにあって、いま私たちは何によって形作られているのかを考察しています。

身近な話題から始めているだけに読みやすい。文化人類学とはなんぞや? まあそんな難しいことから考えずに、ウナギについて考えてみましょうや、 みたいな。軽めに読めてグー。

クジラの消えた日

知人におすすめされて読んでみた本、これがヒット。2017年の前半は神話とか昔話とか叙事詩にちょいハマりした時期だったのですが、その中でもこれは面白かったです。

シベリアの果てのチュクチという少数民族の創世神話。クジラと人間は仲間であり、永遠のつながりーー。という、両者の関係性について紡がれた物語です。

ざっくりいうと「かつて仲良かったクジラと人間。穏やかに過ごしていた。なんやかんやあったけど、今も仲良し。でも、愚かな"兄弟"がクジラを殺した。つながりは消えてしまった」みたいな感じ。ストーリーにするとシンプルですが、叙事詩として面白く読めました。

人間、こんな昔から同じような話をしてるんだなあ。

<この人に会いたかった5> アイヌ語のむこうに広がる世界

恵文社に立ち寄ってなんとなく手に取ってみたら、これが超面白いの。もともと漫画・ゴールデンカムイを読んで「たのし〜」と思ってはいたものの、アイヌ文化に真面目にふれたのは初めて。

アイヌ語の研究者・中川裕教授に聞く言語の成り立ち。アイヌ民族は血族関係でコミュニティを作るから交流も縦割りで、集落によっては「SVO」でいつ語順も変わってきたりするんだって。へー! 手に入りづらいですが、マジで興味深いです。

面白すぎてコンタクトしちゃった。

断片的なものの社会学

社会学者・岸政彦さんの本。これも旅行中に読んだんだっけな。なんでもないブログを読むのが好きと耳にし、おれも好き!と興味を持って読んでみたら胸にきた一冊。このあと、岸政彦さんの著書やら連載やらを読み漁ることになります。

「特別でもない、でもそこには物語がある」という感じで、一人ひとりの声を拾い集めているの超いい。有斐閣から出ている「質的社会調査の方法」もいいです。入門書としてとても易しい。

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?

アニメを見て文庫に入ったクチです。「あなたと私の関係性が世界を変える」を地で行く"セカイ系"。

“人間”は規格外の“獣”に蹂躙され、滅びた。たったひとり、数百年の眠りから覚めた青年ヴィレムを除いて。“人間”に代わり“獣”を倒しうるのは、“聖剣”と、それを扱う妖精兵のみ。戦いののち、“聖剣”は再利用されるが、力を使い果たした妖精兵たちは死んでゆく。

「せめて、消えたくないじゃない。誰かに覚えててほしいじゃない。つながっててほしいじゃない」死にゆく定めの少女妖精たちと青年教官の、儚くも輝ける日々。

という内容。本エントリーのリスト的に超浮いてますが、涙腺直撃でめちゃ良かったんですよ。ボーイ・ミーツ・ガール。ハッピーエンドではない、だけど美しさのある終わり。そういうのに弱いのよね……。

どうしてあの人はクリエイティブなのか?―創造性と革新性のある未来を手に入れるための本

同僚にすすめられて読んでみた。個人的に共感できるメッセージが多く、良かったです。

オリジナリティ、ひらめき、クリエイティブ、才能……ぼんやりしているけど、限られた人間にしか与えられない(とされている)素養。そんな風に思われているアレコレを科学的に調べてみると、実はそんなことないんだよねー、っていう。

絶対音感なんて、天賦の才能じゃないからね。ファクトのないなんとなくの"神話"を揺るがす本、めちゃ面白かったです。

アルカイダから古文書を守った図書館員

まだ読んでいる最中ですが、年末年始に読んで「あ、これいいわ」と思ったのでご紹介します。内容は表題の通り。

古文書を収集し、保護する仕事をしていた図書館員の足跡。彼はなぜその仕事に就き、何を思い古文書を守り抜いたのか。ディテールがこれまたいい。

めっちゃ古文書を集めて周囲の信頼も得て、サクセス・ストーリーを進んでいるなあと思いきや、支援金で図書館を建てる段階で失敗するのね。「雨が降ったらひどいことになった!もう一回支援金くれ!」。そこ人間くさいな(笑)

いいです。

「内なる外国人」――A病院症例記録

北山修さんという精神科医の面談記録。患者さんとの会話をベースに、医師が考えたことなどを交えた本です。

すごいのが、上っ面だけみると喋ってるだけなのに、患者さんが本当に変化していくのね! 面談開始時とその後の変化。最初は全然喋れないのに、少しずつ自分のことを話すようになるのね。

精神分析、セラピーについてなーんも知らなかったので、「なるほど、こうやって"治療"は進められていくのか」と興味深かったです。

Didion 01

これも良かった。ストリップという題材を扱っていますが、エロではない。いやエロではあるのか。

序文の前野健太さんのエッセイがマジでいいんですよね。これは生き方と出会いの本です。通販もやってるみたいです

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

これも良かった。大学1〜2年生レベルのミクロ経済学について、これほど易しく書いた本なんて初めてです。

あと面白いのが、どことなく村上春樹を意識した文体ぽいんですよね。論文みたいなお硬い文章ではなく、文芸の香りを感じる書き方。そのうち「もしも村上春樹が経済学を論じたら」みたいな本も出すのではなかろうか。

今年もアレコレ読みたい

KindleとかDropboxとか自宅の本棚を改めて見返してみましたが、そんなに読めてなかった……2018年はもう少し読みたい。漫画はもっと読むぞ。

むしろ「これ読むべき」という本があれば、ぜひ教えてください。今年も何卒。

===

Twitterでつぶやいてるよ

LINE@も作ってみたよ、ご飯情報届けるよ

友だち追加