@d_tettu blog

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「小屋ブーム」はミニマルライフとちょっと違うかも

模索される「新しい暮らし」

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ミニマルライフやシェアハウスといった、「サイズダウンした生き方」とでも言うような、右肩上がりではない時代の暮らし方がチラホラ話題に上がる。

無駄に幾つもの商品を買ってみたりするよりも、本当に必要なものだけを身の回りに置く。虚構じみた贅沢な暮らしではなく、地味でもいいから肌触りの良い暮らしを選ぶ。物質的な豊かさよりも、精神的な充足感を得ることを重視する。

かつてのバブル世代にはちょっと遠い考え方なのかもしれないけれども、そんな考え方は個人的にも共感できる。

その潮流を受け生まれたのが、昨今の「小屋ブーム」だと思っていた。一軒家じゃなくて、もう小屋サイズで良くね?支出を減らしてこじんまりと生きていこうよ、大量消費ってダサいよ、みたいな。いわゆるタイニーハウスムーブメント。top.tsite.jp

7月25日〜8月2日に長野県茅野市で開催された「小屋フェス」に行ってみると、そのムーブメントの構造が少し具体的に見えてきた。sumika.me

もしかすると「小屋ブーム」は、ミニマルライフの延長線ではないのかもしれない。

別荘の代替品としての小屋

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フェス会場には様々な小屋が建ち並ぶ。実際に生活空間として成立しそうな小屋もあれば、「男の秘密基地」といったような小屋もある。居住としての小屋が多いかとおもいきや、どうやらそうではないようだ。

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ラグジュアリーな雰囲気の小屋も
「二次居住として提案してますね。日常的な家はありつつも、週末はこういう暮らしをしませんか、というカタチで、今回はこういったスタイルの小屋を持ってきました」と話すのは、普段は伊豆でログハウスを作っているという天城カントリー工房の方。幅広い層に興味を持っていただけているとのことで、若い人が週末を暮らすセカンドハウスとして考えていたり、老齢の方であれば庭に空きがあるからそこで…という方もいらっしゃるらしい。

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なんかアッパークラス
お金がないからちゃっちい小屋で暮らしたい…というのはそこまでないという。「やっぱりかっこいいとか、素敵とか、ちゃんとしたものを求めているのはあるともいます」。ちなみに、この小屋は海外の強い木材を輸入して建てたそうで、塗装などのメンテを怠らなければ20年以上はもつはずだ、とのこと。
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これは普通に暮らせるタイプの小屋
小屋の「ガワ」を設計し、実際の施工は工務店などに任せているという「Ajito」の方は、こういったセカンドハウスとしての使い方として「別荘」という言葉を用いていた。「誰でも泊まれるようにできないかとは考えた…どこでも別荘のような考え方で。もちろん生活もできますが、いろんな使い方にフィットするように」と話す担当者。

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ロフトに寝床、下が見えてちょっとこわい
この小屋自体はサンプルではあるけれども、シャワーもトイレもついていて実際に暮らすぶんには困らなさそうだった。耐震性に関しても、国の最高基準に沿って設計しているという。かつ、分解して移動も可能。基礎工事は必要だけれども、これであれば水道などのライフライン工事をしても合計で500〜600万円程度でできるとのこと(土地や細かい内装は別)。

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キッチンとテーブルが一体化
問い合わせなど手応えは感じているとのことで、こちらも客層としては「本当に幅広い、特に偏っている印象はない」と話す。暮らすだけでなく、二次居住としてのニーズを感じているようだ。

実際に別荘の運営を行っている株式会社リゾートメンテナンスの方にお話をお聞きすると、別荘業界からするとなかなかに切実な背景があるという。

「もう右肩下がりなんですよね、業界として。どこかで新しい商品を作って提案しないと未来がない。で、小屋がちょっと話題になっているとのことで、今回試しに作ってみた」。

なるほどーと思っていると、どうやら別荘業界としても消費傾向が変化しているとか。「昔だったら3000万円持っている人が借金して5000万円の別荘を買ったりしていた。どうだ〜っていう感じで。でも、最近は3000万円持っている人が1000万円の別荘を買う。で、そこで色んな遊びをする。余裕を持ってそこで楽しもうとするように変化しているんですよね。私もそういった使い方のほうが日本には合っているんじゃないかなと思っていたんですよ。家族でゆったりするための…アメリカのサマーハウスみたいな」。

ほほー。

各展示スペースで共通して聞かれたのが、上述したような「二次居住」としての小屋。もちろんミニマルライフ的な生活拠点としてもニーズはあるというが、どうやらそれだけではないようだ。

主催者に聞いてみた

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犬もいた。主催者じゃないよ
今回の小屋フェスを企画したSuMiKaの方にこういった点について聞くと、一次居住としての小屋はハードルが高いんですよね、といったことが聞かれた。「コンパクトライフって、いきなりは難しい」という。

確かに、あれこれ捨てて生活を変えるのはかなりのエネルギーがいる。家族を持っていたりするとこれまた難しい。なので、二次居住としての使われ方が実際は落とし所ではないかと。

「若い人に響いている部分もあると思いますね。20半ばから30後半…半ばくらいですかね、そういった世代の人のほうが共感しやすい。こういうのが楽しいんじゃないのかっていう。40〜50ってバブル世代なんですよね、刺さりにくい」。

今回の会場でみられた提案も、どちらかというと「安価で週末別荘とかどうすか?」とか、「土地が余ってるなら趣味のための小屋とかどうすか?」というような提案だったりした。「小屋暮らし」もあるにはあるが、それが主たるニーズではないように思えた。

「小屋」に興味を持って見て回っている40代のご夫婦の話を聞いてみても、「耐久性どれくらいなんでしょうね、休暇で滞在するとしたら…」「離れとしてこれくらいのサイズの小屋って良さそうですよね」といった反応が聞かれた。夫婦や家族で小屋暮らしはちょっと先鋭的だよね…。

タイニーハウスムーブメントの延長線で語られる、いわゆる大量消費へのカウンターカルチャーとしての「小屋」。ネットで話題になるのはそんな切り口ばかりだったけれども、それよりは電車内の広告で見かけたりする「都心まで1時間〜!週末を郊外で過ごすセカンドライフ!」みたいなポジショニングの方が近いのかもしれない。

暮らしについて考えさせられた小屋フェス

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小屋というかこんな建物も。居心地良さそう
もともと小屋を買ってこじんまりと暮らすことに興味はあったのだけれども、今回いろんな人に話を聞いてみて、多様な小屋の使い方というか、暮らし方があるんだなと改めて考えさせられた。確かにいきなり買って暮らすのハードル高いよなあ、買ってみて賃貸もありだし共同購入もありだなあとかとか。

「小屋展示場」から共同で企画しているBAUMのPR担当者いわく、小屋ばかりが前面に出てしまうのもそれはそれで本意ではないらしい。

「暮らすとなると、日本だとちょっとハードルが高かったりしますよね。だけど、小屋っていういろんな要素をいったん削ぎ落したカタチで提案すると、どういう暮らしが良いのか見えてくるものがある。SuMiKaのコンセプトは『好きに暮らそう』。それを伝える一環としてのイベントなんです」。

なるほどなあ。

そろそろ引っ越したい、シェアハウスにでも暫くは暮らして小屋でも建てるかーと思っていたけれども、これを機にどういった暮らしが良いのかじっくり考えてみても良さそうだ。

ここらへん網羅的に取材した記事あんまり見ないので、どっかで出したいなあ。