【2010年】あの出版社は、新卒・採用活動でどんなことを話していたか
何となく昔の日記を引っ張りだしてだらだらと読んでいた。その多くは目も当てられない中学生ぽい文章で、ところどころ「うわああああああああ」となってしまうものだったけれども、興味深い点も幾つかあった。特に就職活動中のメモはなかなか面白い。なるほどーこの会社の人はこんなことを話していたのかー。
というわけで、ここでは2010年のメディア系の企業、出版社にしぼって気になった箇所を抽出してみた。なお、紛失したメモもあるので、もちろんここにはない企業もある。
ちなみに2010年はkindleが米国外でも発売と発表され、「電子書籍元年」の様相を呈していた(あくまでも様相だったけど)。
ところで、会社説明会の書き起こしって全然ないのね。あったら便利なのに。禁止されてそうだけど。
文藝春秋社
中の人からするとどんな会社なの?
- 学生からすると若者向けの雑誌がないかも。おっさん向けの会社。社会のおっさん。
- 85年続いた会社、特徴がある。軸は変わらないくて良い。
- 文藝春秋の「社長日記」を読めばイメージが若干分かる。自由な活気ある雰囲気、変化はさほどない。
電子化についてどう考えているの?
- ウェブ事業部があり、そこでHPやコンテンツを作り運営している。ウェブでも毎日接点を持つことはできるはず、「笑っていいとも」はタモリさんがいて毎日継続的に見られるようになった。
- 電子書籍に関して言うと、やはり編集者の役割が生きるのではないか。作家とのつながりは強く、編集者からの発信も多い。持ちつ持たれつつ。
どんな人と働きたい?
- 入社して好きなことをやれることはない、いい意味でつぶしのきく人間が良い。
- 社員は350人くらいいて、全員が色んなタイプ。足りないところを伸ばすより、良いところを伸ばすと良い。
- わからないことをちゃんと聞く人と働きたい、礼儀大事。
小学館
編集の人に話を聞く
- 他紙の特集内容は出回らないのだけど、サライはキャラがあるのでバレる。「次あたりあれっすよね、時期的に?」みたいな。まあそれはそれで信頼されている。
- 「ミーハー」って超大事。「おれこれ好きなんです!」だけじゃなくてみんなの興味あることに興味持つこと大事。
- (ファッション系の編集では)トレンドは展示会に行って把握する、そこで情報収集して判断する。
- 志望動機は明確にしよう、やりたい企画、目標を作ろう。
- モニター会が重要、読者を呼んで話を聞いてフィードバックをもらう。
- 新聞は毎日読め。雑誌は一覧性のメディア。
講談社
写真部って何してるの?
- 写真は「代理体験」である。
- 編集者、ないし企画者の意思を汲み取るの大事、コミュ力が欠かせない。
- プロとアマの差は「アベレージが高いかどうか、最低限のクオリティが担保されているかどうか」。
- 編集者の要求に応えてこそ。でも初心者でもOK。
なんで女性誌に男性編集者がいるの?
- 視点の唯一性がある、そこが女性との差。
- とは言え男性なので、ニーズを把握するのに周囲の人に話を聞くの大事、ふとした時に生の声を聞く。
- 行動力大事、編集者は面白がってこそ。
小学館集英社プロダクション
出版不況だけど…
- 電子書籍リーダーの隆盛で、今後は書店の意味が変化する。「足を運んでもらうことに価値のある書店へ」。
- キャラクターなどライセンスの重要性が増すはず、そこはAmazonにはできない。
- おそらくkindleはリーダー+映像視聴機器としても利用される。携帯よりも大きいので、映像を見たいというのは消費者の心理のはず。
- かつての携帯の流れと同じで、そうなると、制作、ライセンスを握っている会社が強い。
- 弊社は映像制作、ライセンスを用いたキャラクターなどの2次商品も手がけているので、そこに強み、魅力を感じる。
某出版系企業の先輩と飲んだ時のメモ
- 「いやーちゃんとした仕事に就いたほうがいいと思うけどねえ」
- 出版は上がつっかえていて、社会不適合者が多い。ただ、入ればなんとかなる。やりたい仕事は頑張ったらやれる。
- 金が好きなやつは仕事もできる。
- 出版系が生き残るには細分化して特化するのが良い、小さいニュースサイト、1次ソースをちゃんととってきてこれるところ。笑いとかサブカルとか。
- 雑誌は嗜好品になっていく。
というわけでつらつらと書いてみたけれども、今思い返してみると上記に加えて「これからどうなる」という業界展望については、だいたいが「苦しくはなるだろうけれども、なんとかできるはず、仕事はキツイけど面白いよ」と話していたと記憶している。
どこも言うことはそれほど変わらないし、ライセンスを握っているところもそれは同じだ(新潮社は逆にライセンスがイマイチらしくて嘆いていた記憶がある)。
ウェブについての話は殆どなかったし、説明会出席者からの質問もなかった。たぶん興味なかったんだろう。ウェブやりたくて出版社の説明会に来るか?いたとしたらそいつは相当な変わり者だ。雇ったほうが良い。
まあ、気まぐれでただ書き起こしてみただけだ。
僕は偶然にしてなんとなくウェブの編集者になったけれども、当時あの会場にいた人たちはそれぞれどのような道を選んだのだろう。くっきりとした輪郭で思い出すのは、横に座っていた女の子が凛とした目で「文藝春秋に携わりたい」と話していたことだ。彼女は文藝春秋の編集部で今日も遅くまで仕事をしているのだろうか。
僕はそこまで強い希望がなかったので入社試験は受けなかった。もうきっと交差することはないんだろうけど、思い出してなんだか懐かしい気持ちになる。