JCEJ「『フクシマ』という虚像を壊す」行ってみた
「ジャーナリストキャンプ」について
GWに行われた「福島ジャーナリストキャンプ」の報告会という立て付けで、これに参加したわけではないが面白そうだったので足を運んだ。
キャンプでは元ニコニコ編集長の亀松さん、河北新報の寺島さん、研究者の開沼さんらがデスクとして参加しており、ダイヤモンドオンラインにて記事が公開されつつある。
「フクシマ」という言葉に象徴されるように、固定化・単純化されつつある被災地のイメージに何ができるのか。それがキャンプのテーマ。中にはデータジャーナリズム・チームの取材などまだ記事化されていないものもあり、その進捗など気になるところ。
ともあれ、そのキャンプを通じて参加者は「フクシマ」についてどのような虚像を見出し、破壊を試みたのか。
全体的な流れは以下のまとめを見ていただければ把握できるかと。
JCEJ「『フクシマ』という虚像を壊す」パネルディスカッションまとめ #jcej
「固定化』をどう崩すか
一部では東京をはじめとする被災地外メディアの「縛り」と現地との「乖離」について。限られた時間の中で、ある程度想定されたストーリーに従って取材が進められてしまい、無思考的に記事が生まれてしまう、といった点など。
水島さん「震災からちょっと落ち着くと、津波被害は報道されるが、内陸の家屋倒壊などの被害が出ているところはほとんど報道されない。現地にいればわかることも、東京には伝わってこないギャップがあった」
#JCEJ
— JCEJ:日本ジャーナリスト教育センター (@jcejinfo) June 1, 2013
開沼「マスメディアやネットで流れる福島の情報は、すごく安全か、すごく危険かのどちらにかたよりがち。しかしそのどちらでもない、全然違うところに『第3の現実』がある。そういう『第3の現実』を拾い上げていく必要がある」 #jcej
— Taro Kamematsu (@kamematsu) June 1, 2013
水島「いまの成果主義、コストパフォーマンス主義では、1泊2日の取材で何分かのレポートをつくれ、ということになると、いきなりマイクを向けて「どうですか?」みたいなことをやってしまうことになる」#jcej
— 粥川準二 (@kayukawajunji) June 1, 2013
このような乖離がある。このような構図は、例えば東京に住むデスクが紙面を考える際に、ある程度イメージに沿った取材指示を出し、かつそれに従って動いてしまう記者の問題もある、と。
実際に行ってみると「あれ、違うな」という点ももちろん生まれるわけで、登壇者の開沼さんはその抱えたイメージを何度崩し、再構築するかが大事と話す。
水島さん「ジャーナリストキャンプのデスクとしては何を行った?」
開沼さん「先入観でものを語らないようにして、参加者に『問い』を立ててもらった」
#JCEJ
— JCEJ:日本ジャーナリスト教育センター (@jcejinfo) 2013, 6月 1
また、河北新報の寺島さんは取材のきっかけや、その在り方、伝え方について述べられていた。
寺島さん「現場に行くとわかるが、がれきの根元のはあらゆる生活の場がある。話を聞き始めると、1時間2時間たつと一緒に泣いてしまうこともあるだろう。だが、そこで壁を壊せれば、取材は『大変でしたねえ』だけでは終わらない」
#JCEJ
— JCEJ:日本ジャーナリスト教育センター (@jcejinfo) 2013, 6月 1
寺島「そこから(被災者との)壁って崩れていくんじゃないだろうか。震災前史を聞いて、その後の暮らし、国への思いを聞いて2時間3時間になる。切り取って記事を書くのが大変だった。新聞記事は千文字でも長い方だが、ノートに書かれたことすべてが歴史。共有されて伝えるべきもの」 #jcej
— 広部憲太郎 (@Becky7712) 2013, 6月 1
僕は取材をしたこともなくずっと編集でやってきたわけですが、考えさせられることが多々。
分かりやすく伝えることと、クリアカットな語法で単純化することは紙一重なので、気をつけにゃならんなあと。
「データジャーナリズム」の難しさ
二部では「データジャーナリズム」について、赤倉さん、藤代さん、亀松さんがディスカッション。
赤倉さんをデスクとするチームは「風評被害は本当にあったのか」をテーマにしていたそうで、そのあたりのお話を切り口に話が進む。
データジャーナリズムとは何か、赤倉さんは端的に以下のように述べる。
赤倉「何が出来るのか。主に三つです。1データからニュースを発見する 2データでニュースを顕彰する 3データを可視化する」「公開されているデータを扱うので、特徴は誰もが挑戦できる、読者を巻き込む手段である、チームで取り組む」 #jcej
— 広部憲太郎 (@Becky7712) 2013, 6月 1
また、データジャーナリズムを知るにあたり、下記の動画を見せて頂きました。The Guardianの作成した動画のようで。
Cannes Lion Award-Winning "Three Little Pigs ...
3人の子豚になぞらえた動画で、一般市民が検証に参加する~といったような流れ。
データジャーナリズムはアナリスト、記者、エンジニア、デザイナーといったチームで活動するのが基本、というかやりやすいと言われている。赤倉さんたちも4人チームで活動されたとのことで、亀松さんはその様子を「一体感があって良かった」と話していた。
その一体感を生み出した一要因に「データ」という共通事項が挙げられていたが、その見方には気をつけにゃんらんとの声も。
亀松さん「公開されている情報なので、全員でデータを共有できる。しかし、それぞれが取材して報告すると、どうしてもこぼれてしまうディテールがある。お互いの情報共有が難しくなってしまう。情報共有の計りやすさがチームの連帯感にもつながったのではないかと感じた」
#JCEJ
— JCEJ:日本ジャーナリスト教育センター (@jcejinfo) 2013, 6月 1
コップに半分ほど水が入っているとして、それを「半分も」ととるか「半分しか」ととるか解釈は異なる、という例が話にあったように、共通事項があったとしてそれをどう解釈するかは個々人で異なる。
また、異なる職種で構成されるチームなだけに、それぞれの視座もかなりズレがある。このあたりのすり合わせは知見がほぼなかったりするので、ともすればデータジャーナリズム黎明期の今必要とされているのは、まずはディレクション的な役割・能力なのかなという気もしなくはない。
日本では朝日新聞がちょくちょく手を出していて気になるところだが、「まずはやってみる」で経験値を溜めていかないとどうしようもないので、小さい単位であれアウトプットが出てくるのが楽しみ。
赤倉さんはそのために何が必要か、以下のように述べる。
参加者「データジャーナリズムが普及する上で、やらなければならない課題は?」
赤倉「記者は記者、アナリストはアナリストという感じで、それぞれの連携する土壌が足りていないと感じている。海外では、オープンソースが浸透していると感じるので、協力する土壌が必要」
#JCEJ
— JCEJ:日本ジャーナリスト教育センター (@jcejinfo) 2013, 6月 1
だよなあと思いつつ、野次馬的な立ち位置で今後を見守りたく思っております。
「風評被害」について、記事化にはまだ時間がかかるものの、キャンプが終わってからも活動が続けられているそうなので、期待。
なんか真面目なブログになってきた…。